11月1日、中津城のそばに、新しく中津市歴史博物館がオープンしました。


開館記念の企画展は「未来へ伝えたい中津の宝―学芸員こだわりの文化財―」(会期:11月1日~12月22日)。


学芸員が自己紹介をかね、自分が思う中津の宝を紹介する企画展です。
そこで耶馬溪町の「平田邸」についての展示があります。


平田邸につたわる歴史資料を展示しながら、価値を伝え、建造物の保存活用に挑戦している地域の活動を紹介しています。

今、私達が耶馬渓の景観を観光地として楽しめるのは、大正12年に国指定名勝となったことで、景観を開発から守ることができたから。
その動きを支えたのが当時の当主「平田吉胤」でした。
景観を楽しむ眺望台として、二階建ての自宅を三階建てに改装した住宅は、文化人政界人が集るサロン。三階の間は三方壁がなく、広々と名勝耶馬渓の景観を楽しめます。

企画展にあわせ、平田邸では「茶器と器展」(主催:平田邸活用推進協議会)が開催されました(会期:11月11日~11月17日)。

 
博物館では、平田邸の展示コーナーに「茶器と器展」の案内チラシをおき、現地に誘導しました。博物館の目標は、「博物館で知ったら、そこから現地に行ってほしい」ですから。
会期中は、協議会の方々がかわるがわる常駐し、訪れた方々をご案内しました。多くの方が訪れ、邸宅に、窓から見える景色に感嘆の声をあげました。

そもそもこういう企画ができたのも、「平田邸活用推進協議会」ができたからです。
邸宅を訪れた人は皆口をそろえてこういいます。
「素晴らしいですね。」
「こういう建物は大切に守らないと。」
そして、「〇月〇日に団体で見学したいんで入れてください。」

しかし、老朽化が進む住宅を保護し、その上で観光の対応をするのは所有者にとって大きな負担です。国登録文化財では、設計費以外、補助金はもらえません。
昨今よく耳にする、「文化財を地域で守る」という言葉。
高齢化、過疎化がすすむ地域にとってそれはむなしい響きがします。
平田邸もこれといって打つ手がないまま時はすぎ・・しかし、なんと今年、地元の青年が周囲に声をかけ、「平田邸活用推進協議会」が発足しました。

老朽化がすすんだ邸宅を修復したいのはやまやまですが、それにはとてつもなくお金がかかる。でもそこであきらめては何もかわらない。会にあつまったメンバーからは
「かつてふるさとがダムに沈んでいった、あの喪失感はもう味わいたくない。」
「古い素晴らしい邸宅は次々姿を消していった。そういうものだと思ってた。だけど、この会ができると聞いて、もしかして自分たちで守ることができるのかなと期待を持った。」
「今、このお屋敷を残せなかったら、僕たちは子孫から『なんてことしてくれたんや』と言われてしまう。」
そんな言葉が次々とでてきました。

いきなりすごいことはできないけれど、小さなイベントからはじめてみよう。どういうやり方が平田邸に向いているんだろう。イベントをするなら、庭の草をとろう。お屋敷の掃除もしよう。
ひとつひとつ、確かめるように、「地域の行動」がはじまっています。

平田邸はじめ、耶馬渓の景観を守り私たちに残してくれた人々の思いを知ってほしくて、平田邸を日本遺産「やばけい遊覧」のストーリーの核としました。馬溪橋、平田城址、旧平田郵便局、平田駅プラットフォーム、耶馬渓鉄道線路跡、久福寺・・・と、平田集落には平田邸にちなむ日本遺産がたくさんあります。


平田邸の歴史を知ることで、次は私達が未来へ伝えていく番だと、私たちにできることから始めようと、そう感じてほしいのです。
平田集落では、協議会主催だけでなく、他のイベントも活発になり、今後もいろいろ予定されているようです。

まず一歩、あゆみはじめている平田集落を、訪れてみませんか。

車ですと、馬溪橋たもとの駐車場が便利です。

サイクリングターミナルでレンタサイクルを借りて、歴史遺産めぐりもおススメですよ。

episode6「耶馬渓を守り、伝える」